ノルウェイの森

Norwegian Wood
[%7C]


見ている間は
なぜこんな平凡に思える物語が
こんなに美しく
そしておもしろいのだろう。
そう考えていた。
見終わったその瞬間からは
あの不思議な世界の空気は
一体なんなんだろう。
と考えはじめた。

原作を読んだころ、僕は18、19歳くらいの小僧で
色々なことを知らなかった。
悲しみがどういうものなのか。
悲しみの経験が、次にやってくる悲しみの前には非力であること。
人を好きになって、失って人が泣いてしまうこと。
なぜ、なぜ、自分の考えているように
自分の体が反応してくれないのかということも。
理解できないものごとへの苦しみのことも。
この10年間。僕はそのいろいろな感情を経験し
この物語と再会した。

感情というのは、もう目の前にあるだけでそれは悲しみであり
いらだちは、目の前にあるだけでそれはいらだち。
菊池凛子が表現する感情を見てそんなことを考えていた。
うわっと、どこからか、その感情が私をつかまえて
ごっそり、私の感情の中枢なる何かを奪いさっていく。
私は、18、19のあの頃より、感情的に小僧になった。
感情が感情として理解できるような年月を経て
それこそ
17歳と18歳、18歳と19歳を行ったり来たりせずに
受け入れることができる歳になった。

感情とか
ものがたりとか
出来事というのは
おそらくだいぶこのリアリティの中でも
フィクションで
ノンフィクションのこの世界で
あの物語の中で
流れているような空気を
感じ合えたり、理解できることが
もしかしたら
人と人のコミュニケーションと呼べるものなのかもしれない。


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